原詠人(Eito Hara)
1956年、岐阜県生まれ。
8歳の時、祖母から買ってもらった380円のマルサンゴジラがプラモデル&ゴジラの初体験となる。
1983年、宇宙船の投稿組から海洋堂より1/250バランでプロデビュー。
翌年10月より専業の原型師となり、80年代の海洋堂のゴジラ造型を担った。
その後、怪獣GKの人気衰退にともない海洋堂を離れ、アペンディックスやレッズ等にフィールドを移し、'94年まで約10年間怪獣を造り続けた。
84ゴジラでは東宝との交流もあり、特美で安丸信行氏に怪獣造型の手ほどきを受けたのが自慢。
GKの発生から身を投じ、80年代を駆抜けた原型師の一人であった。
*写真は、完成直後の45cmモスゴジを抱える原氏(1985年暮れ)
KAIJU WORKS
年 | 作 品 | 画 像 | サイズ/材質 | 付帯品 | メーカー | 発表時価格 | 補 足 | 備 考 |
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1983 | バラン | 全身 | 20cm/キャスト製 | 海洋堂 | 5,500 | |||
1984 | 初代ゴジラ | 全身 | 25cm/キャスト製 | 海洋堂 | 15,000 | リアルホビー | ||
ガラモン | 全身 サイド バック | 20cm/キャスト製 | 海洋堂 | 18,000 | リアルホビー | |||
キンゴジ | 全身 全身2 | 26cm/キャスト製 | 海洋堂 | 15,000 復刻18,000 | リアルホビー | |||
ラドン | 半身 全身 | 30cm/キャスト製 | 海洋堂 | 10,000 | リアルホビー | |||
マンダ | 全身 | 30cm/キャスト製 | 海洋堂 | 8,500 | リアルホビー | |||
アンギラス | 全身 顔 | 30cm/キャスト製 | ボークス | 12,000 | OHS | |||
バラゴン | 全身1 全身2 | 30cm/キャスト製 | 海洋堂 | 9,800 | リアルホビー | |||
レッドキング | 全身 全身2 | 30cm/キャスト製 | アボラス頭部付 | 海洋堂 | 8,800 | リアルホビー | ||
バラン | 全身 | 30cm/キャスト製 | 海洋堂 | 7,800 | リアルホビー | |||
ガメラ | 全身1 全身2 | 19cm/キャスト製 | 海洋堂 | 6,800 | ||||
ガメラ | 全身 | 21cm/キャスト製 ソフビ製 | 海洋堂 | 6,800 4,000 | 92年ソフビ化 | |||
バルゴン | 全身 ソフビ版 | 22cm/キャスト製 ソフビ製 | 海洋堂 | 5,800 3,800 | 92年ソフビ化 | |||
84サイボットゴジラ | 全身1 全身2 | 22cm/キャスト製 | 海洋堂 | 8,500 | ||||
初代ゴジラ | 全身 | 20cm/キャスト製 | 海洋堂 | 4,800 | ||||
キンゴジ・レリーフ | 全1 全2 | 35cm/キャスト製 | 海洋堂 | 2,980 | ||||
ゴメス | 全身1 全身2 | 13cm/キャスト製 ソフビ製 | 海洋堂 | 3,000 1,940 | 92年ソフビ化 | |||
ベムラー | 全身1 全身2 | 13cm/キャスト製 ソフビ製 | 海洋堂 | 3,000 1,940 | 92年ソフビ化 | |||
セミ人間 | 13cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | |||||
1985 | エレキング | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | |||
ギラドラス | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | ||||
84ゴジラ | 全身 | 11cm/キャスト製 | スーパーX付 | 海洋堂 | 2,800 | |||
モスゴジ対決セット幼虫版 | 全景 全景2 | 12cm/キャスト製 | モスラ2体付 | 海洋堂 | 4,000 | |||
大魔神 | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | 1/30 | ゴロザウルス | 全身1 全身2 | 30cm/キャスト製 | 海洋堂 | 15,000 | リアルホビー |
バラゴン | 全身1 全身2 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | ||||
ペギラ | 全身1 全身2 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | ||||
レッドキング | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | ||||
ゴモラ | 全身 | 13cm/キャスト製 ソフビ製 | 海洋堂 | 3,000 1,940 | 92年ソフビ化 | |||
ウルトラマン Aタイプ | 全身 | 12cm/キャスト製 ソフビ製 | 海洋堂 | 3,000 1,940 | 92年ソフビ化 | 仕上げは田熊勝男氏 | ||
ゴジラ対キングギドラ | 全体 | 14cm/キャスト製 | ベース付 | 海洋堂 | 13,000 | |||
ガメラ | 全身 | 15cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | ||||
ギャオス | 全身 | 15cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | ||||
ゲゾラ | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,500 | 南海の大怪獣より | |||
ガニメ | 全身 全身2 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 4,000 | 南海の大怪獣より | |||
カメーバ | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | 南海の大怪獣より | |||
南海の大怪獣セット | 全体1 全体2 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 10,000 再18,000 | 上記3体セット | |||
キンゴジ対決セット | 全体1 全体2 全体3 キンゴジ コング | 14cm/キャスト製 | ベース付 | 海洋堂 | 5,800 | |||
モスゴジ | 全身 | 20cm/キャスト製 | 海洋堂 | 6,800 | ||||
幼虫モスラ | 全身1 全身2 | 20cm/キャスト製 ソフビ製 | 海洋堂 | 2,000 1,940 再3,500 | ソフビ再販は、軟質ソフビ製 | |||
'84ゴジラ | 全身1 全身2 | 18cm/キャスト製 ソフビ製 | ベース付 | 海洋堂 | 7,500 3,500 | 90年ソフビ化 | ||
アンギラス | 全身 | 20cm/キャスト製 ソフビ製 | 海洋堂 | 6,800 6,800 | 92年ソフビ化 | |||
1986 | 45cmモスゴジ | 全身1 全身2 | 45cm/キャスト製 | 海洋堂 | 29,000 | |||
45cmキンゴジ | 全身 | 45cm/キャスト製 | 海洋堂 | 32,000 | ||||
キンゴジ | 全身 全身2 | 20cm/キャスト製 | 海洋堂 | 7,000 | ||||
メカニコング | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 2,500 | |||||
テレスドン | 全身 | 14cm/キャスト製 ソフビ製 | 海洋堂 | 3,000 1,940 | 92年ソフビ化 | |||
ネロンガ | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | ||||
キーラ | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | ||||
アントラー | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 2,500 | ||||
ケムラー | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | ||||
モスラセット | 全身 | 12cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,800 | ||||
初代ラドン | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,500 | ||||
サンダ対ガイラ | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,800 | ||||
決戦ゴジラ | 全身 | 30cm/キャスト製 | 海洋堂 | 12,000 | リアルホビー | |||
大魔神 | 全身 全身2 | 30cm/キャスト製 | 海洋堂 | 10,000 | リアルホビー | |||
1987 | メガロゴジラ | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | |||
初代ゴジラ | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,500 | ||||
総進撃ゴジラ | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | ||||
総進撃ギドラ | 全身 | 14cm/キャスト製 | 海洋堂 | 9,800 再12,000 再々15,000 | ||||
キンゴジ(完成タイプ) | 全身 | 17cm/プラ製 | 木製飾り台付 | 海洋堂 | 4,500 | 完成品 | ||
モスゴジ | 全身 | 9cm/キャスト製 | 海洋堂 | 1,800 | ミニリアルタイプ | |||
キンゴジ | 全身 | 9cm/キャスト製 | 海洋堂 | 1,800 | ミニリアルタイプ | |||
ガイガン | 全身 | 9cm/キャスト製 | 海洋堂 | 2,300 | ミニリアルタイプ | |||
ヘドラ | 全身 | 9cm/キャスト製 | 海洋堂 | 1,800 | ミニリアルタイプ | |||
メカゴジラ1 | 9cm/原型 | 海洋堂 | 未発売 | ミニリアルタイプ | ||||
'84ゴジラ | 全身1 全身2 | 30cm/キャスト製 ソフビ製 | 海洋堂 | 9,800 3,800 再4,500 | ||||
初代ゴジラ | 全身 全身2 顔 | 30cm/ソフビ製 | 海洋堂 | 3,800 再4,500 | ||||
ガラモン | 全身 横顔 | 25cm/ソフビ製 限定キャスト版 | 海洋堂 | 4,500 ? | ||||
バラゴン | 全 | 20cm/キャスト製 | 海洋堂 | 5,800 | ||||
バラン | 全 | 13cm/キャスト製 | 海洋堂 | 3,000 | ||||
1988 | はいぱあモスゴジ | 全身 | 25cm/キャスト製 | レッド・バロン | 12,000 | |||
1989 | 決戦ゴジラ | 全身 | 26cm/キャスト製 | アペンディックス倶楽部 | 12,000 | |||
1992 | ガッパ | 全身1 全身2 | 27cm/キャスト製 | レッズ | 9,700 | 雄タイプ | 1/220 | |
1994 | ラドゴジ | 全身 | 25cm/キャスト製 | レッズ | 15,000 | |||
ラドン'93 | 全身 | 32cm/キャスト製 | ベース付 | レッズ | 6,500 | |||
ベビーゴジラ | 全身 | 20cm/キャスト製 | レッズ | 12,000 | 1/8 | |||
初代ガメラ | 全身 | 24cm/原型 | ADE | 15,000 | ||||
(番外) 1990 ~ 1994 |
地球最大の決戦セット | 全景 ゴジラ ギドラ ラドン モスラ | 14cm/キャスト製 | ベース付 | 海洋堂 | 28,000 | ジオラマ4体セット | |
モスゴジ対決セット成虫版 | 全景 | 10cm/キャスト製 | 海洋堂 | 7,000 |
*はいぱあモスゴジ('88)は、村尾ゴジラ氏による作例です。
*決戦ゴジラ('89)は、村尾ゴジラ氏による作例です。
[補足]
- 83年末、バンダイの模型情報別冊「怪獣ハンドブック1」では、自社の特撮コレクションと共に海洋堂の怪獣GKを大きく取り上げる事になった。
宇宙船の常連投稿者だった原氏は、速水氏のGSV、白井氏のバラゴンやゴロザウルスに合わせる形で1/250バランを造り起し、海洋堂に納品する。
これが実質のプロデビューとなる。
参考:1982年当時、宇宙船に載った、アマチュア投稿時代のモスゴジ、バラゴン、ゴロザウルス - 翌84年から、リアルホビーサイズ(30cm)の怪獣を次々リリース。(当時の原氏)
速水氏や白井氏とならんで、海洋堂怪獣キットの黎明期を支えた。 - 同じ躍動感を表現するポージングでも、氏は、動きの中の決めポーズではなく、静から動へ今まさに移らんとする、動き出すその瞬間を好んで立体化した。
そのため、両足の裏がきちっと接地しているものは少なく、必ずと言って良いほど片方の足のかかとやつま先が上がっている。
くせの強いそのポーズは好みの分かれる所であり、作品によっては、決してかっこ良いものばかりとは言えない。
しかし、時には滑稽なまでのその動きからかもし出される、怪獣の生物感と愛らしさが氏の作品の最大の魅力と言えよう。 - 初期のガラモンではトゲパーツが500個以上、ボークスのアンギラスでは440本あった。
- その初期ガラモンは、着ぐるみとはまったく別物。 このガラモンは、成田亨氏の設定イラストを立体化したそうである。
- こちらは、84年暮れにゴジラ製作に励む原氏、で、サイボットゴジラを抱えて咆える原氏。
- 84年の同時期には、84ゴジラを筆頭に、おまけ用として円形のプレートを製作している。
ラインナップは、84ゴジラ、
初代ゴジラ、キンゴジ、モスゴジ、初代ラドン、バラゴンなど。 直径45mmほどで、ゴジラのロゴは某プラキットから流用。 レリーフよりフル立体に近い造型であった。 - 84年のキンゴジ・レリーフもこの時期のもの。 海洋堂はラインナップを模索しており、商品として成り立つ大型のレリーフを企画、 「やるなら、まずキンゴジのマルサン・パッケージ写真で」 という事でまとまった。 しかし、広告にも出さずに店頭売りのみの実験的商品で、あまりヒットせず、このシリーズはこの1作のみで終了となった。
- 映画84ゴジラでは、原氏のリアルホビーサイズ初ゴジが立体資料として東宝に提出された。 当時の特美では、原初ゴジを隣に置いて新ゴジラの粘土原型が造られている写真が残っている。 このモデルの作者として、撮影所を訪ねた原氏は美術チーフの安丸信行氏に歓迎され、直接怪獣造型の手ほどきを受けた。 この初ゴジは、宣伝ポスターにも使われ、原氏は、その後バランと並んで84ゴジラを好んで立体化している。
- 80年代中期には、海洋堂から14cm前後の怪獣や怪人を数多く発表している。 特に85年には、海洋堂のボン、宮脇修一氏から「プロの原型師は質だけでなく、量もこなせないといかん」と言われ、15cmサイズとはいえ、週1体に近いスピードで、怪獣をスクラッチしていった。
- 海洋堂の恐竜シリーズでは、動きのあるポージングで1/20にてイグアノドン(サイドビュウ)(\15,000)、ケラトサウルス(\15,000)、1/35ではアロサウルス(\4,500)、イグアノドン(\4,500)、パキケファロサウルス(2体セット\8,500)、メガロサウルス(\5,000)、1/50対決セットでティラノサウルスvsトリケラトプス(\8,500)も製作している。
さらに、'80年代後半に試みられた完成品のシリーズでは、キンゴジと共に1/35イグアノドン(\5,800)が木製台付きで販売されている。- 同じく海洋堂では、ドラゴンも3体作成している。 第1弾は、ウイリアム・スタウトのイラストから立体化したもので、独自のアレンジを加え飛びポーズとした45cmサイズのドラゴドン(\15,000)。
第2弾は、30cmサイズのオリジナルドラゴンでメガレックス(\15,000)の名で製品化され、聖飢魔IIの2枚目のアルバムジャケにも使用された。 参考:ジャケットデザイン
第3弾は、1作目と同じくウイリアム・スタウトのイラストから立体化した、15cmサイズのゴールド・ドラゴン(\5,000)である。- また、同時期にウルトラマンのAタイプも作成しているが、こちらは体表の仕上げができないため、フィニッシュのみ同じ海洋堂社員の田熊氏が行った。 原型には、田熊氏のみの表記のものもあるが、しわ等の作成まで原氏が行ったそうである。
- 85年の南海の大怪獣は、家族旅行に行った旅先の伊勢で家族がくつろぐ中、周りの観光客にも奇異な視線を投げかけられながら、粘土にヘラを入れて完成させたそうである。
この3体は、対決シリーズとして始めから対峙するように造られたが、価格を押さえるため、ガメラやギャオス同様単体でも発売された。- 総進撃ギドラは、ゴジラ対キングギドラに翼のしわなど追加され、15cmを代表する出来となり、現在でも単品で販売され続けている。
後に地球最大の決戦セットとして販売されたものは、ゴジラ対キングギドラのゴジラ、総進撃ギドラ、初代ラドン、モスゴジ対決セットの幼虫モスラの組み合わに、新造ベース(原氏作ではない)を付けて発売したものである。- 同様に成虫版のモスゴジ対決セットも、当初は別々のキットであったミニリアルのモスゴジとモスラセットの成虫モスラを組み合わせて販売したものである。
- 45cmモスゴジは大きさ、出来共に氏の代表作と言えよう。 くねっともだえたような感じがいかにも原モスゴジである。 プロフィールの写真は、45cmモスゴジを徹夜続きで完成させたその朝に、海洋堂スタッフが広告用に撮ったもの。 この写真は宣材としても広く出まわったが、原氏は「海洋堂にカンズメになって仕上げして、出来あがった直後の朝で、眼も眠たくてヒゲも剃らんまま撮られてしまった」と、当時を回想している。
- 86年には、決定版といえる大魔神をリアルホビーサイズで製作した。 しかし、唯一肩のプロテクター形状について、未だに気になっていると語っている。
- 86年春、映画で使われた高山良策氏作の4.5m大魔神が、京都より海洋堂に納品されている。 しかし、ベルトのバックル部分が欠落していたとの事。 その時、大魔神を造形したばかりの原氏に「今なら、形が頭に入ってるから造れるだろう」と声がかかり、直径60cmほどのバックルを作成したそうである。 (参考:海洋堂に現存する4.5m大魔神とそのバックル)
- 原氏は、近年エステルから出た高濱氏の大魔神を、プロポーションもポーズも完璧と絶賛していた。 ただし、「(惜しい事に)バックルだけは形が違う」と、造形へのこだわりをみせている。
- 海洋堂ではこの他85~86年前後に、15cmで怪傑ライオン丸(\2,000)、変身忍者嵐(\3,000)、1/15シリーズで、仮面ライダーの毒トカゲ男(\1,800)、カニバブラー(\2,000)、超電子バイオマンのメッサージュウ(\2,000)、アクアイガー(\2,000)、聖戦士ダンバインの1/48ビアレス(\9,800)、1/72ボゾン(\3,000)なども原型担当している。
- ダンバインのオーラバトラーは、一応ロボットではあるが生物的デザインも取り込まれており、シンメトリーでなくても良いとの条件で2体ほど原型を担当している。(あまり、気は乗らなかったらしい)
しかし、その後のFSSのモーターヘッド作成依頼には、さすがに承服できず、海洋堂を離れる一因となったと語っている。- 海洋堂最後の年のガラモンは、ソフビ製品として企画されていた。 当時はトゲの抜きが難しく、製品化までには1年以上時間がかかった。 造形の方はリアルホビーサイズ版とは違い、今度は着ぐるみを意識して作成されている。
ただし、内側の指だけは人間の親指を模して短くアレンジされている。 これは、マルサンのソフビでも行われたアレンジで、ガラモンの哀愁を出すには絶対必要と原氏は語っている。- 氏は、バランとバラゴンが最も好きな怪獣だと言う。 '87年、海洋堂を辞める事を決めた後には、やり残した怪獣として最後にバランとバラゴンの四足を制作している。
- このバラゴンは昭和40年、少年マガジンの巻頭カラー特集で初めてカラー図版で紹介された怪獣着ぐるみを、そのままのポーズで立体化したもの。 記事は、松屋デパートの展示会を特集したものだったそうで、三尺モデルの写真が多い中、バラゴンだけは本物の着ぐるみの写真だったとか。 当時9歳の原少年は、このバラゴンが強く印象に残っていたという。
'87年には、井上氏もウェーブで四足バラゴンを作成しているが、原氏は「あれもよくできてはいたが、自分のイメージと違う」と、最初に見た着ぐるみ写真の四足バラゴンを立体化した。- バランもバラゴン同様、立ち、片膝立ちと立体化し、四足だけはやっていなかった。 氏はデビュー作もバランであったが、最後もバランの決定版を造りたいと自ら希望し、四足バランを手がけた。 この2体の四足モデル(原氏は、「這いバラン、這いバラゴン」と言っている)が、海洋堂での最後の仕事となった。
- 氏は、ゴジラでは決戦ゴジラが最も好きで、ゴジラというと、モスゴジ、決戦ゴジラ、大戦争ゴジラ、えり無しジラース(赤札堂ゴジラ)などがミックスされて造形してしまうと語っている。 レッド・バロンのはいぱあモスゴジも「モスゴジ」としているが、このあたりの1番好きなミックスゴジラとなってしまったそうである。
- 最後の活躍の場となったレッズからは、マンモス、ティラノサウルス、フタバスズキリュウ等15cm恐竜シリーズ4体の発売も計画されていたが、原型のみで実現はしなかった。
- ゴジラの体表表現も、原型師の個性が出るところ。 レッズのラドゴジについては、「お腹の模様は本当はタイル系なんだけど、あえて昔からのゴジラ独特の体表にした」と語っている。
- 94年にはメーカーから離れ、自らADEというブランドを設立、平成ガメラの復活に合わせて初代ガメラ発売を広告して予約を募った。(HJ94年5月号の広告)
これがうまくいけば、あと数年、個人メーカーとして活躍したはずであるが、最低100体はと考えた原氏の期待に反して、20体強しか予約が集まらず生産は中止。 原型は福岡のガメラファンに譲り、ADEは1作も作品を出す事なく、原詠人の名とともに消えていった。- 第一線を退いてからは、趣味でスーツサイズのゴロザウルス、カメーバ、レッドキングのヘッド等を造っているそうである。
- 2019年 原氏新聞に載る
しばらく風の噂しか聞かなかった原氏だが、近況を岐阜新聞で知ることができた。 地方紙でゴジラ原型師として取り上げられ、その縁からか地元の公民館で個展を開いたり、カルチャー教室で紙粘土工作の講師まで務めているようだ。 とにかくお元気そうでなにより。 ただ、20年前にすでに眼がきつくて小さいものは造れないとおっしゃっていたので、教室でスーツサイズのヘッド造ってないかちょっと心配(笑)。
[特設ページ]原詠人氏、新聞に載るの巻- 2020年3月20日 原氏テレビ番組に出演する
なんとテレビ愛知の制作・放映番組で、原氏が紹介される事になった。 しかも番組は1時間丸ごと原氏を追いかけたヒューマンドキュメンタリーで、これは怪獣原型師史上初の快挙!! タイトルは『KAIJU殿下 伝説の原型師、再進撃ス』。
※関東でも21日に、テレビ東京で30分の短縮版が放映された。
原型師が、それも怪獣を造っている原型師がテレビで取り上げられるのは異例のこと。 ただただ、感動である。
[テレビ愛知番組公式サイト]KAIJU殿下 伝説の原型師、再進撃ス|番組詳細|テレビ愛知- 2021年4月 原氏新聞に載る2
テレビ放映から1年、またまた岐阜新聞に近況が載った。 「岐南町の小中学生らと共作の~」って、完全に地元の文化人になってるなあ。 ゴジラの真似を全身使って本気でやる大人は、子供には受けるのかもしれないけど....
うれしくもあり、ちょっと寂しくもある風の便りでした。
[岐阜新聞Web]原型師・原詠人さんが作る迫力の怪獣 「ガメラ」「大魔神」を新聞紙で造形
- 95年以降は、公式の目立った活動はしていない。
原型師としてビリケンやRICにも接触したと聞いているが、結果は実らなかった。
原型師列伝を作成した事により筆者の交流も増え、氏のいくつかの噂も聞いていたが、最近のそれはどれもムチャクチャな話しばかりであった。 - 井上氏や速水氏と同様、原型師という言葉もない最初期から専業化した氏であるが、結局怪獣キットの衰退とともに消え去ってしまった。
黎明期には、海洋堂のマネージメントがあったとはいえそれなりの功績を残したと考えるが、商業化された業界から締め出され、行き場を失って消えていった原型師の一人となってしまった。
EPISODE
[発言集]
2000年末、とあるつてよりご本人と連絡が取れ、色々お話できる機会にも恵まれた。 これは、その時(2001年1月)の氏の発言集である。
- 子供の頃の話
「怪獣映画の公開がうれしくてね。 中学の頃は、映画館に8ミリを持ち込んで撮影したりした。 音はカセットデン助で録音したりして。 それを、家に帰ってから観るんですよ。」
「スクリーンや、テレビの画面をカメラで撮ったりもしたな。」
注:ここでいう8ミリは、当時の画像のみ記録のフィルム現像タイプのこと。 - 当時について
「ぼくはね、まあ、1番おいしいとこもらったという感じですね。」
「井上さんやら海洋堂の速水さんがやった後、時流に乗って原型やらしてもらっただけで、1番おいしい思いしましたわ。」
「先生、先生言われてね。 資料も全部メーカーが揃えてくれた。 講演会やサイン会も、随分しましたよ。 そんなだから、勘違いしてしまうよね。 今考えると、解るけど。」 - 作風について
「あれは別に、天性とか才能ではないんですよ。 海洋堂の方からね、坊さん(井上氏のこと)が着ぐるみの再現でくるなら、ウチは生物感出していこうと。 その指示にしたがって、造ってただけなんです。」 - 活動停止について
「レッズの後にね、自分でメーカーやろうとしたんですよ。 で、100体は予約もくるだろうと。 それくらいくれば、続けられるなと。 まあ、今まではメーカーに任せてたんで、実際どれくらいくるか見てみたかったんですよね。 それでHJにも広告載せて。 そしたら、20体強くらいしかこなかった。 なんだ、こんなもんかと。 それでもう、辞める決心つきました。 原型は昔からのファンで、福岡で歯医者さんやってる熱心なガメラファンの人に譲りました。」 - ミレニアムゴジラについて
「着ぐるみ、良く無いですね。 口のあたりに、直線入っとる。 怪獣に直線はいらん。 生物に、直線は無いんですよ。 それを解っていない。」
- 近況について
「今は趣味程度に、自分用に1/1着ぐるみサイズのヘッドを何体か造ってます。 もうね、細かいのは眼がきついので、大きいのしか造れません。」
「昔から、決戦ゴジラが1番好きなんですよ。 だから、今やってるうまい人に決戦ゴジラの着ぐるみサイズのヘッド造って欲しいです。」
最終更新:2021年4月16日